多忙化する教育現場の実態が連日ネットニュースになって飛び交う毎日。
本当にこの職業は「ブラック」になってしまいましたね・・・。ブラックじゃない部分もあるのですが、ブラックな部分がなかなか改善しないまま時が過ぎていくので、今やブラックの定番の職業にまでなってしまいました。
今回はブラックな職場の中で失われてはいけないもの、そしてこの職業のとても大切な部分、「生徒との関わり」について、書きたいと思います。
生徒との楽しいつながりは若手教員時代の特権
私にも若手教員時代はありました。
生徒との距離が近かったので、話は合うし、感性的にも友だちと近いものがあり、同時代を生きる若者としての何かしらの同族意識というものがありました。
もちろん、先生と生徒なので、きちんと距離は取るのですが、それでも年が近いというのは、いろいろと話が弾むものです。
生徒会担当になってリーダー育成キャンプに参加して、飯ごう炊さん、キャンプファイヤー、レクリエーション・・・。授業の枠を超えていろいろな体験をする中で人間関係も深まっていきました。
部活動では、いろいろとやりあったりしながら、一緒に練習をして、試合にも挑戦して、目標を持ったり、勝ち負けを経験することで、一緒に成長していきました。
定時制勤務時代はとにかく毎日職員室で雑談。ゆったりした時の中で、冗談を言い合い、突っ込まれたり、突っ込んだりの会話の中で、お互いの個性を認め合う関係ができていきました。
これも若手時代、「時間的な余裕」というものがまだあったからだと思います。
ある女子生徒との関わり
定時制勤務時代、赴任してきたばかりの私に、ある1年生の女子が結構つきまとってきました。
そのときの1年生は50人ぐらいいたのですが(留年生がたくさんいたため)女子が4人だけで、彼女はその女子の雰囲気になじめず、かといって上級生の女子とも関係が持てず、話しやすい女性の先生である私に近寄ってきたのでした。
彼女はどう見ても「ヤンキー」とはほど遠い、大人しい生徒でした。
高校はどこも合格しなかったので、仕方なしに定時制に入学しました。
彼女は真面目な部分もありましたが、融通が利かず、また非常に卑屈で、すぐに「だって」「私なんか」を口癖のように連発し、物事を後ろ向きに捉えていて、毎日がつまらなさそうでした。
笑顔も少なく、非常に自己肯定感の乏しい生徒でした。
ところがこの生徒は私と性格が対照的で、私は彼女の欠点が意外すぎて気にならず、彼女は私の適度なにぎやかさが好ましい。
私が多少きついことを言っても、異様に明るかったので、会話をとても楽しんでいました。
結局は相性が良かったのだろうと思います。
生徒と人間関係を作るということとは
そうやってつきあっていくうちに、彼女ができの良いお姉さんと常に比べられながら過ごしてきたこと、家庭では会話が少ない状態であることを知りました。
そうこうしているうちに部活動も私の指導するソフトテニス部に入り、私の指導を素直に聞き入れ、とうとう全国大会までいくことになりました。
そして少しずつ自信をとりもどし、生徒会にも入り、人前で話もし、アルバイトも元気にやりはじめました。
私は彼女に特別なことは何も教えてこなかったような気がします。
まだ若かったので深い考えもなく、ただ寄り添っていただけです。
しかし、それが私にとって人間理解という点で最も勉強になったような気がしました。
生徒は授業だけ、問題が起きたときだけ、用事があるときだけ呼ばれて話をする、という関係では心を開かないんですよね・・・
先生という仕事のライン上で接するだけでは、なかなか人間関係はできないんです。
日々ともに過ごすということを重ねて、だんだん人間関係ができていき、だんだん影響を与え、与えられという関係ができて、次第によりよい方向へ、自然に流れていく・・・ということを学びました。
教育現場にいると、
「あの子は悩んでいるようだから、呼んで話をしよう」
「進路の話をしないといけないので、面談をしよう」
「今日は授業で不適切な態度が見られたので指導しよう」
こんなふうに「生徒を指導する」ために話をする場面が多いですよね。
・・・でも、生徒からすると、何かを指導されるために話しかけられているということになります・・・。
何の目的もなく、ただその生徒と話をする・・・。
生徒と関わるにはそういう時間がベースにないといけないのかもしれません。
教育現場の多忙化の中で
そして、若い時代を過ぎ、子育てを家事動労に追われ、生徒との関係を作る時間も無くなっていきました。
さらに週に二回7時間の日になりました。
放課後は会議や補習で埋まっていきます。
時間割は過密になりました。
総合的な探究の時間やICTの導入、○○教育の導入、新学習指導要領・・・とカリキュラムは過重になっていきました。
そして研究指定校を受ければ、文書を書く時間も、外部との連携を作る時間も増えます。
パソコンと向き合う時間が増えました。
多忙化に拍車がかかる昨今、生徒とゆったり会話していた時間を懐かしく思い出しています。