国語科も探究的な学びを求められるようになってきました。
探究とは、課題を発見し、情報を収集して分析し、考察することを通して課題を解決し、またさらに新たな問いを見つけていく・・・という一連の流れを指します。
文部科学省のホームページはこちらです。
今回は2021年12月4日(日)「第7回 学びのイノベーションフォーラム 」で発表した私の取り組み
国語科単元
『コロナ時代をどう生きるか』に取り組んで~ICTの活用と探究へのステップ~
を紹介します。
「学びのイノベーションフォーラム」については以下をご覧ください。
※本発表は、日本国語教育学会の月刊誌、月刊国語教育研究 2月号特集テーマ 「新型コロナ時代 言葉の学び手の今」 で発表済みのものである。
新聞コンクール参加がきっかけ
コロナ禍の最中の3年前、地元の新聞社の新聞コンクール (新聞感想文の部)に、参加賞狙いでクラスで取り組もうと呼びかけました。
新聞を読まなくなっている生徒たちに、社会を見つめる視点を与えるべきでは、と思ったというのもあります。
新聞を購読していない家庭も多く、生徒は新聞が珍しく、興味深そうでした。
生徒に自由に記事を選ばせた結果、半数はコロナ関連の記事でした。
あどけない笑顔で日常を過ごす生徒たちの書いた文章は・・・
「…(前略)高校野球をしている自分としても、病院に行きにくくなってしまった。少しでも気になるところがあったら学校休めと言われていても、大会前には休みにくいし、休んで検査を受けてももし陽性が出てしまって広島県の大会を中止にしてしまうと思うと怖くてたまらなかった。」
「新型コロナウィルスの影響で出演する予定だったライブはすべて中止になりました。(中略)いつ再開できるか分からないような状況で、家で一人で練習することがとても辛かったです。さらに学校の文化祭も中止になってしまい楽しみが次々となくなっていきました。」
「私は吹奏楽部に所属していて、今年も十数名の後輩を迎えた。しかし、例年とは何もかもが違う。コロナの影響で部活動は短縮され合同演奏も思うようにはできない。そして大会がすべて中止になっている。長い臨時休校の影響で、演奏技術も下がってしまった。この記事と同じような状況だ。その結果、部員の中には目標を見失ってしまい、自分が何をしているのか分からなくなっているものもいる。私もその中の一人だ。」
コロナ禍の中で活動を制限され、高校時代を思い切り過ごせないことへの苦しさ、焦り、失望・・・といったものでした。
新聞コンクールに応募すること以上に、彼らに今のこの状況を見つめさせる取り組みはできないか、彼らと一緒にコロナ時代について考えてみたい、と考えました。
つまり、単元を生徒の「生活」から立ち上げることにしたのです。
これは大村はま先生のお教えにも影響されています。詳しくはこちらをどうぞ!
投げ入れ単元の時間確保に救世主登場!
そこで、コロナ関連の新聞記事や書籍を読み、情報を集め、単元構想を始めました。
しかしながら、明らかに決められた年間計画の中では無理です。
そこで思いついたのは、毎時間10~15分間ずつのサイドメニュー(=帯単元)として継続していくことでした。
授業の冒頭10~15分間は「コロナ時代をどう生きるか」という単元、その後は通常授業です。
明らかに時間が足りないと思われましたが、そこはICT機器の登場が救ってくれました。
GoogleWorkspaceの導入によってICTを活用した授業展開が可能となり、かなり授業時間を効率化できるようになって、投げ入れ教材の投入が可能になってきたのです。
そして、以下のような計画で実施することにしました。
素材文を集めることが最大の難所
ともあれ、素材文探しに没頭した8月。生徒実態に合った素材文を用意することがとても大変でした。
しかし一昔前よりもデジタルでの収集ができるようになっているので、かなり便利になったと言えるでしょう。
特に朝日新聞のデジタル版にはお世話になりました。そのほかにも新書も読みました。これは私自身の勉強になりました。
実際の単元展開は読む&書くの繰り返し
実際の単元展開はシンプルで、私が素材文を用意し、生徒に配信し、生徒は気づきと感想を書いて読み合うというものです。
生徒は本気になっていますので、場を用意するだけで十分でした
以下、スライドにまとめているので、ご覧ください。
※このときはまだ一人一台端末ではなかったので、家に帰ってフォームに入力させていました。また入力した文章は紙媒体でプリントアウトして読み合っています。いまならもっと効率よく進みますね。
仲間との共感、励まし合いの気持ちが生まれました。
コロナの問題を社会的に捉え直し、視点が広がりました。
著作権の関係でぼかしをいれています。
ここの記事から取ってきています。
さらに問題を掘り下げ、より深く捉えることができるようにと考えました。
文章には少し難解な語句が使用されていますが、意欲を持って取り組んでいるので、なんとか読もうとし、難しい語句も自分の文章の中で使おうとしているため、文章のレベルが上がった印象がありました。
こうしてみると、大がかりに見えますが、実はデジタルで配信、回収、作成を行うことになるので、手間は余りかかりません。
生徒はインプットとアウトプットを繰り返す中で、当事者意識を持って意欲的に取り組みました。
まとめ
●ICTの活用で、時間を圧縮したり、データの保存、管理、コピーがしやすくなったり、と教材の読み比べ、生徒同士の読みの交流がしやすくなった。
●生徒は自分自身の悩みや困りごとから出発しているので、常に主体的、意欲的であった。
●新聞記事や有識者の文章など、少し難しくても、意欲を持って読み、使おうとするので、認識が拡充するとともに、言葉を獲得したといえる。
生徒が意欲を持って主体的に取り組む課題を設定すること、そのための素材を準備すること。この二つさえあれば、生徒は勝手に勉強していくということがわかりました。
いつもそういう教材を提供したいものですね。
反省としては、やはり話し方指導、スライド作成指導、磨き合う指導が時間が無くてできなかったということです。
シラバスという計画のサイドメニューとして投げ入れ教材的に行うので仕方が無いことなのですが、生徒が意欲的に取り組んでいるので、本当はこちらの方をメインにできるぐらいの自由度が現場に欲しいですね。
それにしてもICTはいろんな可能性を切り開いてくれます。
そのほかにもこんなICTの利活用があります。