コロナ禍とその後展開されたGIGAスクール構想によって加速した、教育界のICT活用。
研修会のテーマでもICTの効果的な活用を扱う学校も増えてきました。
しかし、なかなかうまくいかないという話も聞きます。
- 教員が新しいことに乗り気でない
- スキルがバラバラで教えにくい
- 何をどう研修して良いのかわからない
などなど、校内研修会の難しさは色々あると思います。
そこで、校内研修会開催担当として6年のノウハウを持つ私が、研修会の企画運営のコツについて、語ります。
まずはアンケートの実施と実態把握
ICTスキル実態調査
校内でICTを常に使っているか、時々なのか、余り使わないのか、アプリケーションの使用状況はどうなのか、校内の実態をしっかり調査します。
私が前任校で年度当初にアンケートを採ってみると、なんと6割の人がGoogleworkspaceなどのアプリが使えないという結果になりました。
校内研修を企画する人は、ICTスキルの高い人が多いので、ほとんど使ったことがない人が6割もいるという実態は想像していないかもしれません。
苦手な人は苦手なんですよね・・・。(それでも仕事なんだからやってほしいのですが・・・)
ある程度できる人がどんどん推進していき、、ICTに手を付けない人は進まないまま・・・という格差問題が学校現場の大きな問題です。
実態調査はやはり研修会の内容を大きく左右します。ぜひ、こちらのチェックリストも活用してみてください。
教員のマインドセット
そして何よりも大きな問題は、「ICT活用なんか、しなくてもいい」「学習効果が上がらない」と考えている人が少なからずいるということです。
未来を生きる生徒たちに、ICTスキルを身につけ、ICTを活用して問題解決をしていく力をみにつけることは重要な教育であるはず。
大人の都合で子どもたちの未来を台無しにしてはいけません。
教員のマインドセットが最も重要な課題です。
その問題点を解決するために、次のような企画を考えました。
教員のマインドセットにはシナリオ仕立ての企画
教職員には年齢構成上、大ベテランの先生が半数近くを占めます。その先生に上から目線でしたり顔に前に立って講義をしても、説得力が生まれるとは思えません。ましてや、その分野のプロでもないのに・・・。
ということで、上から目線でないやり方がよいですよね。「今回、このことについて知らなかったので、私が勉強したことを発表します」という立ち位置なら、受け入れられると思います。
でも、今回私は採用した方法は、前任校でもやりましたが、スライドを劇仕立てにして、台詞を書き、それをアフレコのように若手教員に読んでもらって展開するという方法でした。
こんな風に無料素材の人物をDLして、スピーカーノートに台詞を書いていきます。
若手の教員が一生懸命演じてくれるので、とても爽やかですし、好印象です。それに劇仕立てなので、堅苦しい言葉も、親しみやすく入ってきます。
これはとても効果的でした。
そうして、最後のとどめは、「まんがで知る デジタルの学び: ICT教育のベースにあるもの」のマンガの一部を引用。許可はいただいています。
どうですか?このシーン。
実際にそういうことをつぶやいておられる先生が何人もおられたのではないでしょうか。
このシーンはこのように続きます。
しかし子どもたちは大人になって常に自分をバージョンアップしていく力をつけないと、変化の激しい未来の社会を生き抜くことはできない。
主体的に学ぶ子どもを育てるためにもっとも重要なことは我々もまた主体的に学び、自分を変えていくということなんだ・・・。
これは参加者の先生も強い衝撃を受けたんじゃないでしょうか。
マインドセットを狙いにいった訳ですが、これは的中しまして、その後の振り返り付箋用紙では、やっていかなければならないなあ~などのコメントが続出でした。
シナリオ仕立てにした効果は抜群でした。
ICTスキルの向上はワークショップ形式
いろいろな研修会に参加してみて、一度はオンラインワークショップを講師として体験から、やはり見るだけではだめで、実際に体験してみるワークショップ形式が一番効果的だと感じました。
しかし、あまりにもスキル差が大きくて、これまた一斉にワークショップを行うと、差が開いて、結局混乱してしまい、延々と個人指導になる・・・できる人が暇になる・・・という問題がありました。
そこで次のような形式を採用しました。
1 グループに分け、コーチ役を設定する
ワークショップ形式にすると、講師1人に対して、30~40名の先生という形になりますが、そうなると、混乱しますので、コーチ役を設定しました。
一番いいのはマンツーマンです。
しかし、マンツーマンになるほどのコーチ数を調達できません。
なので、スキル差をよく考えて3人一組にして、真ん中にコーチ役の先生に座ってもらい、左右の先生のサポートをお願いしました。
これでずいぶん助かりました。
2 懇切丁寧なマニュアルを用意する
コーチ役をお願いしても、万全とは言えません。
スクリーンに大写しで、動かし方を説明しても、速くてわからなかったり、2~3手まとめて説明すると、もうわからなくなったりします。
そこで、これでもか、というぐらい丁寧なマニュアルを用意しました。
はっきり言って相当手間がかかります。
ですが、わからなくてフリーズする人が何人も出るかもしれないと予想されるので、必死になって作りました。
これぐらいの丁寧さです。かなり細かいと思います。
パソコンスキルの高い人に限って、説明を飛ばすんです!!!
私はそれでずっと困ってきました!!なので、これでもか!というぐらい丁寧にしました。
その苦労、わかる人にはわかってもらえたと思います。
このマニュアルをプリントしてそれぞれに配付し、手元に置いてもらって研修会を行いました。
3 ワークショップの内容は欲張りすぎない。
私の持ち時間は80分。
本当に真面目にやるなら一日かけた方がいいのですが、それも難しいので、限られた時間で、最も効果が出るように考えた結果、共有、Googleフォーム、Googleスライドがうちの学校として、必要最低限だろうと判断し、コンパクトにしました。
そしててんこ盛りにならないよう気をつけました。
ついつい詰め込みすぎるのですが、それは消化不良を起こします。
欲張りすぎないことをオススメします。
まとめ
1 教員のマインドセットは重要、シナリオ仕立てで引き込んでいく。
2 ICTスキルはワークショップ形式で行い、スキル差のある人同士で組ませ、詰め込み企画にしない。
3 準備に時間をかける。
そして、重要なのは何よりも企画者自身が楽しんで取り組み、協力者を2~3人巻き込んで、楽しい雰囲気を作ることですね。
その雰囲気は周囲に伝わります。
そして、私が尊敬するある先生はこう言われました。
一人の百歩より全員の一歩。
みんなで一歩踏み出すことがもっとも効果があると言われたのです。
目に見えて効果が上がるということはないですが、確実な一歩を踏み出すことが最も大切なのですね。